「しあわせの定義」 (藻骨・恋人設定) 雨月スミレ様 注意・サンジはブルックを『レディ』呼びします。 ・・・・・ことの始まりは、サンジの一言からだった。 「・・・・おい、マリモ。てめえ、レディをなんで大切にしねえ!」 言いがかりだ、と。言われたゾロは思い反論しようとしたが、あまりにサンジの眼が真剣だったので反論がでるのが少し遅れた。 その遅れた間にも、サンジは。 「付き合っているにも、関わらず。丁重に扱いもしない!特別扱いもしない!!優しく、甘やかしもしない!!! 恋人を、そんな目に、あわせるなんて!何やってやがる、てめえは!!」 いちいち当たっていることを口にしてくるので。ゾロの反論は、口からなかなか出てこない。 そして、サンジは。 「・・・・人さまの恋愛事情に、口出すのは野暮だと分かっているが。 少しぐらい、恋人を甘やかしてやったらどうだ?」 見てて、可哀そうだぞ!レディが!! 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 とうとう。ゾロから反論を奪うことになる。 何故なら、サンジに言われて。ゾロが、自身の行動を省みれば。・・・・確かに、そう言われても仕方ない状態だったからだ。 そして、言われたことで。 (・・・・・・・口にださないだけで。 ブルックも、そう想ってんのか?) はじめて、そこに想い至る。 傍にいて、話しているだけで。しあわせに満たされていたゾロは、自分と同じ気持ちでブルックもいてくれると思っていた・・・・・が。 (・・・・ブルックに聞いて、確認してもないことを。何、決めつけてんだ俺は。) ゾロとブルックは別の人間であるのだから、気持ちが同じであるとは限らないことに。いま、はじめてゾロは気付いた。 そうして、今さらのように愕然としているゾロに。ようやく理解したかと、サンジは馬鹿にしきった目で見ながら。 「・・・・・・・とにかく!レディを悲しませたら、俺が承知しないからな!」 言いたいことだけを言って。ゾロの前から、立ち去る。 サンジが立ち去ったあとも暫く、固まっていたゾロだが。 (・・・・・・とにかく。ブルックのとこに行こう。) 少し、弱い足取りで。サンジに言われたことを反省しながら、これから恋人としてブルックを甘やかしてやろうと決心したのだが。 (・・・・・・女を、甘やかすってのは。なんで、こんなに難しいんだ?) 決心した日から。一度として、ゾロは上手くできた試しがない。 女性を、しかも恋人を甘やかす、なんて。ゾロはやったことがないために、甘やかすタイミングがイマイチ掴めないし、甘い言葉は羞恥が邪魔してなかなか出てこない。 いまだって、そうだ。 二人で一緒に出掛けているけれど、どのタイミングで何を言えばいいのか、何をしたらいいのか全く分からず。ただ、いつものように話して、歩いているだけだ。 だけど、それではいけないと必死で考えたゾロは、せめて恋人らしい行為としてブルックと手を繋いで歩いてはいるが。それ以外は、全くできていない。 なのに、ゾロと手を繋いでいるブルックは。とても、とてもしあわせに笑って。 「うれしいです、しあわせです!」 そう、何度も何度も噛み締めるように繰り返して。子供みたいに、繋いでいる手を左右に動かす姿に。 (・・・・・こんな、ちっぽけな行為で。ここまで、喜ばれてのも複雑だ。) 嬉しいと感じつつも。もっと欲ばったことで、しあわせだと喜んで、笑って貰いたいとゾロは感じている。 (・・・・とにかく、これから頑張って。こいつを、甘やかしてやれるようになろう。 そうしたらブルックに、しあわせだって。もっと、たくさん笑わせてやれるはずだ。) そう、頑張りを新たに決意しているゾロは、意識をそれに取られている故に。傍で笑っている恋人の心を、そのせいで見落としている。 ・・・・・誰だって気味悪く思う骨、だけの手を繋いで。誰だって忌み嫌う骨、だけの外見を気にせず一緒に外を歩いてくれることを。ゾロは『たいしたことではない』と考えているが、ブルックは『得難いこと』だと考えているから。 「・・・・・・うれしい、です。しあわせ、です。」 言葉にすれば、つたない単語しか出てこないけれど。でも、とてもしあわせな気持ちに満たされて、ブルックは嬉しすぎて泣きたくなっているというのに。 それを全く分かっていない、見落としている男は。 「・・・・・そうかよ。」 あまり納得していない物言いで、でも、どこか照れた表情で言葉を返しながらも。今以上のしあわせにブルックを溺れさせようと、甘やかしてやろうと画策している。 (第三者にも恋人にも分かり難い、甘やかな彼女のしあわせ。) |