HEART&HARD 2   HE HAS NO WORD

 段々思考がまずい方向へ行きそうになって、それを振り切ろうと幽励は何とか言葉を押し出した。
 「・・・あのよ。」
 「何だ。」
 振り返った飛影の瞳を、まるで今初めて見たようで一瞬どきりとする。人間のものではない・・・紅い瞳。


「聞いてみたかったんだけどよ。お前と雪菜ちゃんて、母親が違うっていってたよな、確か。
…てこたあ、雪菜ちゃんの母親が氷女てことだよな?お前産んだ方のお袋さんとか、親父とかって、どんな妖怪なんだ?」
「そんなことを聞いてどうする。」不機嫌そうな声を飛影が出した。
「どうするっつーわけじゃねえよ。ただ聞きたかっただけだって。俺、お前のことってほとんど知らねえもんな。」
「知る必要なんてないだろう。」ぶい、と前に向き直り、また飛影の表情は幽助から見えなくなる。
「て・・・っめえなあーっ!」いい加減沈黙にイライラしていた幽助がキレた。
「必要があるとかないとかじゃねーだろがっ!気になるヤツのことを知りたいっつ−のは普通なあ・・・っ」

 ありゃ?

そこまで叫んで思わず止まる。これじゃまるで何かの告白だ。
言葉に結まり、ふーっ、と息を吐き出してソファに思い切り身を沈めた。そして再び沈黙。
(ほんっと、自分のこと喋んねーよな、こいつって。・・・大体、年だっていくつなんだか謎だしよ。)

そっと、飛影を眺める。
鍛えられてはいるが、首も肩もまだ細い。もしかしたら自分とそう大差ない年齢なのかもしれない。
いずれにせよ、彼は弱肉強食の魔界でたった一人で今まで生きてきたのだ。この小さな身体と、強い妖力(ちから)と、剣の腕と、孤独な心で。
それは、多分幽助の想像を絶する程の道のりだったのに違いなかった。
 もう一度、ゆっくりと目でたどる。
黒のタンクトップから伸びた、きれいに筋肉のつい た腕、それから肩へ、そして、蕗になっている首筋へと視線を移す。色が白いのはそういう肌なのか、それとも日に当たらないからか。
 途端、全裸の飛影をはっきりと思い出してしまった。
さっき見たばかりの二人の姿が脳裏に蘇る。
あの腕が蔵馬にからみつき、足は蔵馬に抱えられ、そうして。

(や・・・・やっベ----------っっ!)
全身がかあっと熱くなる。

(か・・・っ考えるなっ!考えるなっつーにっ!)
慌ててその映像を頭から追い払おうとするが、思い出すまいとするはど余計に意識してしまってどうにもならない。
(別に俺あ、あれ見てコーフンしたとかってんじゃね−ぞっ!ホモじゃねえんだから!こいつのカラダ見たからって、別になんてことねえだろがよーっ)
気持ちを落ち着けようと、必死で頭のなかで目まぐるしく考えを巡らす。

「幽助」
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