HEART&HARD 2   HE HAS NO WORD


 幽助の愛撫を全身に受けながら、飛影は蔵馬の言葉を思い出していた。
好きなら好きだと言葉にしたほうが楽になる、と。
 だが、そもそも飛影は初めから、好きだ嫌いだという感情の存在そのものを知らない。
 そんなものは生まれ落ちてこのかた飛影の生きる世界にはなかった。自分に与えられたこともなかった。
自分にとって邪魔になるものは殺す。必要なものは奪う、それだけだ。
 自分が相手を「どう思う」かなど考えたこともない。
それに妖怪はもともとあまり言葉に依らない。すべて力でもって己の強さを表し、生き残るのが掟だ。
誰かに対し甘やかな情を抱くすべを飛影は持たない。ましてそれを言葉で表すことなど知らない。

 それならば己の中にある、形のないこれは何なのだろう。
幽助の愛撫はただ無我夢中なだけで決してうまくはない。それなのに、触れられたそばから身体が熱くなってゆく。
  熱さの底に揺らめいている正体の知れないものに、飛影は戸惑っていた。


 熱が、高まってくる。
幽助はさらに下へと手を這わせた。もう熱を帯びている中心を手の中に包み込むと、飛影は首をふり、声を漏らした。
「・・・・・・ふ・・・・う・・・っ・・・・・・・・・・ん・・・・っ」

(・・・・・・・こいつ・・っ。こんな顔をすんのかよ・・・・っ)
初めて見る飛影のなまめかしい表情と声に、信じられない思いだった。
もっと見たくて、思わず指の動きが激しくなっていく。

 「あ・・・・・・・・・・あ・・・・・・っ!!」
喉をそらし、飛影は幽助の手の中に放った。濡れた指を飛影の奥へ差し入れ、そこの感触も、指先で確かめるように何度も抜き差ししては、周辺をなぞる。

「ゆ・・・・・すけ・・・・っ」
飛影は薄目を開け、責めるような声で坤いた。かすれたその声に幽助の熱が高まる。
両足を押し開き、一気に飛影の中に身体を進めていった。
 ひきつれる痛みに飛影は層根を寄せるが、もう加減する余裕は無かった。
熱に煽られるように、腰を突き動かす。
飛影の腕が幽助の背に回される。

しがみつかれ、爪を立てられたその痛みを感じながら、幽助は飛影の奥でいきついた。


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